興味深い多彩な出会いがずらり

ロンドンの現地ガイドいわく、ロンドン・アイは朝一番で行けば大丈夫でしょう。
ドームはガラガラですよと。
つまり、ドームは新しい一〇〇〇年の一日を体験できるをテーマにはしたが、大きいけれど面白くもなんともない博覧会で、時間の無駄ということか。
そこでまず、ロンドン・アイにトライすることにした。
朝九時半、世界最大の観覧車の下に到着。
当日売りに並ぼうとするが、わかり難い英語でここ三日間は定期点検のため正午から営業という説明。
やれやれ。
そこで、五月にお目見えしたばかりのテート・モダン美術館まで、枯葉が冷たく舞うテだ。
二〇世紀のモダン・アートだけがここに移されてきている。
入場は無料。
ヨーロッパの国々では美術館・博物館に自由に入れるところが多い。
ここもその一つ。
子供たちがモネの睡蓮の前に、腰をおろしたり寝ころんだりしてスケッチしている姿などはうらやましい光景だ。
北欧の美術館でも同じようなシーンを目にして感動したことを思い出す。
主な展示は三、四、五階だが、特に五階のヌードをテーマにした展示に見入る。
こんなに生々しくパワフルな作品を見るのは初めてだ。
生そのものの迫力を感じる。
テ-ト・モダン美術館からテ-ムズ川を渡り、セント・ポール大聖堂に向かう歩行者専用橋も完成した。
ミレニアム・ブリッジという。
できるにはできたが、あまりに揺れるため、未だに使用されぬままになっている。
テ-ト・モダン美術館の休憩室の窓からは、人の通らぬその橋が見える。
とんだミレニアムだ。
現在は通行可。
そこから見るロンドンブリッジの眺めが素敵だという話も聞こえてきてはいる。
さて、名物のタクシーでロンドン・アイへ戻る。
当日券は楽に買えた。
高さ一三五メートル、二五人乗りのゴンドラが三二台連なり、三〇分のフライト。
航空会社のBAが運営しているので航空用語が使われている。
四八キロ先まで眺望できるというが、それよりは眼下のビッグベンなどが高い位置から新しい角度で見られる方が目新しい。
カメラ・アイ的に新しい発見があった。
旅を終えてこのパックは最終日がフリーになっている。
こうしたタイプは割に多いのだが、人それぞれに街に出る。
買い物中心の人、留学している娘と一日の出会いを楽しむ人、地下鉄にトライしながら大英博物館に行く人。
私は、お話してきたようにミレニアムのロンドンを歩いてみた。
二〇世紀の終わりを飾り、二一世紀への新たな光を輝かせるかのように、クリスマスの飾り付けがそこかしこで始まっていた。
ツアーは参加者のほとんどが満足という評価だったが、もう一日、フリーが欲しかったという声も聞こえる。
こうして少しずつ個人旅行に移行していくものなのかもしれない。
私としては、もう少し日数をとって、ローマがイギリスを支配した象徴として残る英国の万里の長城、ハドリアンズ・ウォールと、先史時代の謎の遺跡ストーン・へンジへも足を伸ばしたかった。
しかし、そのどちらも好みの問題で、一般的にはさして感動を呼ぶものではないのかもしれない。
これこそ個人旅行の分野というべきか。
実質、五日間のイギリスの旅-自分でこのコースを、この値段で構成して手配し、この日数で旅することは不可能だったろう。
ハードで疲れはしたが、充実した八日間であったことは確かだ。
安いパック旅行も捨てたものではないと、この旅をまとめてみたのだが、実は、旅はこれで終わらなかった。
もう一幕あったのだ。
007に出会えたかも最終日のヒースロー空港。
長髪、黒いスーツ、古ぼけた皮のカバンにアンブレラを持った、一見女性のようなロンドンっ子の青年が搭乗手続きを手伝っている。
別れ際に彼は、このフライトは007便です。
どこかで聞いたような、わくわくするナンバーですよねとジョークを飛ばして帰っていった。
その007便に乗り込み、ゆっくりワインを飲みながら、シートバックの液晶テレビを観ていると、ミレニアム・ドームだ。
私たちが見に行くのをやめた昨日、宝石強盗団が襲って来たと伝えている。
展示品の目玉中の目玉、世界一大きく美しい雫型のダイヤモンドミレニアムスター二〇三カラットを狙って、強盗たちは大型ブルドーザーで煙を上げながら突入。
警官隊と派手な銃撃戦まで繰り広げた。
その上、テ-ムズ川には逃走用の高速艇まで用意していたという周到さ。
007も顔負けか。
成功すれば他の宝石と合わせて三億五〇〇〇万ポンド当日のレートで三八八億円を超える被害が出る。
朝八時で、客は一〇〇人ほどだったらしいがケガ人は出なかった。
この計画、実はロンドン警視庁が事前に察知。
三週間前からミレニアムスターはイミテもちろん一網打尽。
あの日、ミレニアム・ドームに行っていたら、真っ赤な偽物の世界一のダイヤに感心させられて帰ってくるところだった。
いや、むしろ流れ弾に当たらなくて良かったことを喜ぶべきか。
午前中は定期点検ですとロンドン・アイに乗せてくれなかったのも、もしかすると、事件の巻き添えを未然に防ぐための言い訳だったのかもしれない。
あのまま乗っていて、強盗が成功していれば、ロンドン・アイのゴンドラから、下のテれていたかも--。
その後、閉園間近を迎えているのに予定入場者数に遠く及ばないでいたミレニアム・ドームへ、今度は、事故現場をひと目見ようという客が増えたと、皮肉なニュースも流れてきている。
いよいよ待望の地での観光が始まる。
日本から十数時間、多くの場合、現地には夜到着するだろう。
空港でスーツケースを受け取り、壊れた箇所はないか点検する。
現地旅行代理店の係員もやってくる。
ポーターが我々の荷物を山のようにカートに積み上げバスに向かう。
個別に払うチップはいらないが、自分の荷物が載っているかは確認しよう。
ポーターがいないなど、時と所によっては、自分でバスまで転がすケースもある。
迎えのバスに乗り込む。
車中から見る初めての地の夜景だ。
ホテルまでの時間に、添乗員や現地係員からお金のことなど一般的な注意事項が説明される。
空港では現地通貨に両替する時間がとれない場合が多いので、ホテルで最初の両替をすることになる。
はじめは一人五〇〇〇円か一万円ぐらいの額で様子をみよう。
ホテルでのレートは有利でないことが多いが、便利なことはたしかなのだ。
ついでにスモールチェンジ・プリーズと相手に伝えて、少額紙幣やコインも頼んでみる。
うまく行けば当夜の枕銭が手に入るだろう。
再両替の時に必要なことがあるので、レシートも貰っておこう。
ホテルでのことについては後で詳しく述べるとして、まず、次の朝から始まる観光の楽しみ方を探ってみよう。
渡されている日程表を改めて広げてみる。
車窓、下車、入場と分けられているだろう。
朝になると、多くの場合は大型バスに乗り込んで観光に出かけるわけだが、バスの窓から見るだけで説明を聞いて通り過ぎるのが車窓、バスから降りて車外で写真が撮れるのが下車、五分間だけ停まるのでお好きな方はお写真をという場合もある。
建物や庭園などに入って鑑賞するのが入場だ。
車窓からの観光の場合、どうしても窓越しに写真を撮ることになる。
この時注意したいことは、バスの窓ガラスは紫外線や熱線カットのためうっすらと色が入っているものが多く、正確な色で撮影できるとは限らない。
もう一つ注意すべきことは、ピントがガラス面に来てしまうケースがあることだ。
フロントガラスだけはほぼ正常な色で見えるのだが、いつも前の方に座るわけにもいかないのが悩み。
さらに一列目の席は保険適用外になり、お客は座ることができない。
ご注意を。
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